彼岸すぎて秋の気配

明日はご恩日法要という午後、不都合があると分かり、又しても急なお参りとなってしまいました。異常気象であっても、境内のお山のケヤキなどはすでに色づき始め、過ぎ去った夏の蒸し暑さを、爽やかに変えてくれています。定番の彼岸花、ピンク色の山紫陽花、ジンジャー、百日紅など、最後の力を振り絞っているように感じたものです。

  

親先生から9月は、「自浄其意 (自らその意を浄くする) 」といただきました。 七仏通戒偈として『岩波仏教辞典(中村元先生他共著)』にあり、過去七仏が共通して保ったと言われる偈で、仏教思想を一偈に要約したものとみなされていると…。 漢訳で「諸悪莫作(しょあくまくさ)、衆善奉行(しゅうぜんぶぎょう)、自浄其意(じじょうごい)、是諸仏教(ぜしょぶっきょう)」【法句経183】というと…。 

  道元禅師による『正法眼蔵(増谷文雄氏・全訳注)』には、唐代・杭州の刺史・白居易と、杭州の鳥窠といわれた道林禅師との問答が述べられています。 道元禅師のそれは、宇治県の興聖宝林寺にて、延応二年(1240年) 八月十五日・中秋の名月の夕に示されたものとあり、 (原文)『古仏云(こぶついわく)、諸悪莫作(しょあくまくさ)、衆善奉行(しゅぜんぶぎょう)、自浄其意(じじょうごい)、是諸仏教(ぜしょぶっきょう)。 これ七仏祖宗の通戒として、前仏より後仏に正伝(しょうでん)す、後仏は前仏に相嗣(そうし)せり』と・・・中略。  (現代語訳)『古仏いわく、もろもろの悪をなすことなかれ、もろもろの善を奉行して、みずからその意を浄(きよ)む、これもろもろの仏の教えなりと…。これは七仏に通ずる教誡(きょうかい)として、前仏より後仏へと正伝し、後仏は前仏より相嗣ぎていたものである』と・・・中略。

  

親先生には先の平成7年(1996年)、親仏さまより、信徒会館、庫裡建設にあたり、不動明王をいただいて「自浄其意」をお授けいただいたと…。もとより、これら建設は、宗教法人たる当山としての範疇にあったものでしたが、親仏さまの「自浄其意」は「甘えることなく自らを浄くせよ、これぞ衆生済度の道と心得よ」とのお導きをいただき、宗教法人としてあるべき土地(境内を含む)と庫裡を切り離し、自宅としての手続きを一般信徒と同様に行われたと…。その結果は、庫裡への課税、高金利の住宅ローンの返済が待ち受けていたと…。しかしながら、親先生には、返済のお行(務め)として「自浄其意」に思いを致しつつ信徒同行して寄り添うことが叶ったとのこと…。特別の思い出のあるお言葉として優しく聞こえてきます。

  

白居易と道林禅師との問答は、あまり仏教に詳しくない居易に「如何なるものか、仏法の大意?」と問われて、道林禅師いわく「諸悪莫作・修繕奉行・自浄其意、是諸仏教」と答えたと…。居易のいわく「そんなことなら三歳の童子にだって言えよう」と…。道林禅師の返していわく「たとえ三歳の童子に言い得ようとも、八十の翁でも行じられまい」と…。 善いことをするための努力は、無駄にはならないものと…。

  

新型コロナは、ついに全体数の掌握を諦めることになりました。つい、忙しさにかまけて、手抜きすることのないように、良く基本を守って、コロナ禍対策を皆さまと共に頑張りたいものです。 インフルエンザ予防接種と共にコロナも確実に対策したいものです。そしてコロナ禍の根絶を皆さまと共に祈願したいものです。

(合掌)

(管理人)