またしても急遽のお参り

先の日曜日、またしても急遽のお参りとなりました。突然の事と言いながら、毎度、毎度の突然のことであり、もはや「毎度のこと」にほかならぬと思う次第…、新緑の境内は、お同行さまの草刈り御行 (いつもありがとうございます) にて「くよし」の煙が青くたなびくなか、親先生にもご挨拶が叶い、ありがたいことです。そしてまた、本堂の裏山には、親子の「サル」の群れがあって、賑やかすぎるくらいでした。先日のNHKスペシャル (島根県三郷町のお話し) の「獣害転じて福となす」を思い起こします。

  

親先生より6月は、「不退転(後戻りできないという気持ちでがんばる。)」、といただきました。)

岩波仏教辞典(中村元先生他・編)によると、「不退転」とは「無退」とも訳し、修行において、退歩しないことを言い、「阿鞞跋致(あぴばっち)」と音写する…と。修行者がある程度の階位にまで達すると、もう二度と欲に染まり、迷いに苦しめられる状態に後戻りすることがなくなった堅固な心の状態を言う…と。 将来、仏陀になることが約束されて決して迷いの世界に転落することがない菩薩の心のあり方を言う…と、あります。

  

そして、仏説無量寿経、四十八願のうち、例えば四十七願には、世自在王仏が法蔵菩薩(未来の阿弥陀仏)の求めに応じ、二百一十億の仏がたの国々のすべてを目の当たりにお見せになり、また、法蔵菩薩は優れた願を起し五劫の長い間思いを巡らして浄土をうるわしく整える清らかな行を選び取られ、世自在王仏の求めに応じ、すべての人々に、次のような願を説き述べられた。――(原文で)…『設我得仏(せつがとくぶ)、他方国土諸菩薩衆(たほうこくどしょぼさっしゅ)、聞我名字(もんがみょうじ)、不即得至不退転者(ふそくとくしふたいてんしゃ)、不取正覚(ふしゅしょうがく) とあり、―― (現代文で)…もし私が仏となった時、他方の国土の諸々の菩薩たちが、私の名を聞いて、すぐに悟りへと至って、退くことがない、ということがないならば、私は正しい悟りを得ることはしません。――』と、訳されています。

また、仏説無量寿経・四十八願のうち、最後の四十八願には、――(原文で)…『設我得仏(せつがとくぶ)、他方国土諸菩薩衆(たほうこくどしょぼさっしゅ)紋、聞我名字(もんがみょうじ)、不即得至第一第二第三法忍(ふそくとくしだいいちだいにだいさんほうにん)、於諸仏法(おしょぶっぽう)、不能即得(ふのうそくとく)、不退転者(ふたいてんしゃ)、不取正覚(ふしゅしょうがく) とあり、 ―― (現代文で)…もし私が仏となった時、他方の国土の諸々の菩薩たちが、私の名を聞いて第一音響忍、第二柔順忍、第三無生法忍の三忍へと速やかに到達し、諸々の仏法の位において退くことがない、ということができないならば、私は正しい悟りを得ることはしません――』」と、訳されています。

  

そして、無量寿経の最後の部分には、『釈尊が弥勒菩薩に仰せになった。「如来がお出ましになった世に生まれることは難しくその如来に会うことも難しい。ましてこの教えを聞き信じて保ち続けることは最も難しい事であってこれより難しい事は他にない。そうであるから、私はこのように仏となり、様々なさとりへの道を示し、遂にこの無量寿仏の教えを説くに至ったのである。そなたたちは、ただ、これを信じて教えのままに修行するがよい。」 釈尊がこの教えをお説きになると、数限りない多くのものが、皆この上ないさとりを求める心を起した。

 一万二千那由他の人々が清らかな智慧の眼を得て、二十二億の天女や人々が阿那含果を得て、八十万の修行僧が煩悩を滅し尽して阿羅漢のさとりに達し、四十億の菩薩が不退転の位に至り、人々を救う誓いをたて、様々な功徳を積んでその身に備え、やがて仏となるべき身となったのである。その時、天も地も様々に打ち震え、大いなる光明は広く全ての国々を照らし、実に様々な音楽がおのずから奏でられ、数限りない美しい花があたり一面に降りそそいだ。釈尊がこの教えを説き終わられると、弥勒菩薩をはじめ、様々な世界から来た菩薩たちや、阿難などの声聞の聖者たち、ならびにそこに集う全てのものは、その尊い教えを承って誰一人として心から喜ばない者はなかった。』と、あります。  『不退転』とは、修行される菩薩の方々の決意であり、その名を冠した位であること…と。仏さまの世界は、遠い遠い先にあるらしいとのこと…もっと驚くことには、『劫』とは、一つの宇宙が始まって消滅するまでの時間らしい…。または、四十里四方の岩を天女が3年に一度舞い降りて衣の袖で払い、岩がすり減って無くなるまでの時間とも…。インド哲学の広大な宇宙観に、驚くばかりです。また、その時代、文字文化が無く、お釈迦様入滅後約1000年もの間、8万4千部もの法が口伝に依って伝承されたとあり、さらなる驚きです。

  

新型コロナウイルス感染症は、いよいよ減少傾向ですが、その先は油断大敵のように感じます。ワクチン接種が進んでいますが、他方では熱中症のこともあり、マスクを外すことも考えられているもようです。しかし、オミクロン株の後遺症は、重篤なものであるとのこと、クラスターが発生しそうな規模の集会には参加しないか若しくは徹底した対策が必要ではないでしょうか…。やはり、普段からの努力が不可欠、マスク、手洗い・消毒、密にならないなど基本を守りつつ、適切な換気対策の上でのマスク中止など、工夫したいものです。 新型コロナウイルス禍の撲滅、一日も早い終息を強く願うものです。

(合掌)

管理人